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布団の中でだけ育つ植物

妖精に乳首はねえ

住んでいる街の話

紅葉は曇り空に映えると思う。空が低くなるような、大きな綿埃を背景にした紅い星形の葉は何にもまして美しいと思っていた。しかし本当は紅葉は夜の池に最もよく映える。煌々と明るい月に照らされて池の面に映る葉と幹は、平らであるはずの水面を、地球の奥深くまで、いやそれよりもさらに果てしなく続く、大きな大きな穴に変えて、穴は静寂に居て、そして唸りをあげて見る者に襲い掛かってくる。穴というよりそれはもう黒がそこにあるといった風情で、ニーチェの親分の言葉をあえて誤用するならば深淵を覗き込むときには深淵もこちらを覗いているので、穴に落ちている紅葉をもっとよく見たいからといって迂闊に覗き込んではいけない。底のない真っ黒に落ちて落ちて落ち続けてしまうよ。それでも怖いもの見たさに紅葉の時分になると毎年見に行くので紅葉狩りは肝試しだ。紅葉が夜の水面に映えるというより、夜の水面が紅葉によく映える。