布団

妖精に乳首はねえ

人は知らず知らずに助け合う生き物らしく

幕内力士を平等に愛したい。それほど熱狂的な相撲ファンというわけではなく普段の大相撲の幕内の試合は毎日見ている、それくらいの相撲好きでしかない僕だが、幕内力士の悪口を言ったことがないのは数少ない自慢である。バイト先のマスターはかなり過激な人間で、車を運転しているときに少しでも運転マナーの悪いタクシーなどを見かけると自分に何の迷惑も掛かっていなくても追いかけていって文句を言いに行くような人間なのだが、マスターは力士の悪口をすごく言う。稀勢の里は肝心のところで勝てないアホだ、鶴竜横綱の器ではない、モンゴルに帰れ、などなど。といってもこういう悪口は許せる。たいてい年寄り連中に今の相撲を批判させたらこういうことを言う。ただある日一つだけ許せない悪口があって、「琴奨菊はおしりがぶつぶつだからダメ」というのには参った。おしりがぶつぶつなだけでダメと言われる琴奨菊に同情した。同じ福岡県出身の力士がおしりのぶつぶつを批判されているのは耐えられなかった。耐えられなかったが、マスターにはハハと乾いた笑いだけを返しておいた。耐えられた。
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そもそも力士におしりのきれいさを求めている人間なんていない。




バイト先はそれなりに古くからやっているちょっと高級な飲食店なので、色々な話を聞ける。バブル期の話が特に好きだ。バブル期の、彼女に現金で億ションを買ってあげたりといった豪勢な話も好きだしバブルがはじけてめちゃくちゃになった話も好きだ。バブルがはじけて70億損した男が株屋に行って、ひたすらに「死ね~~~~~死ね~~~~~~」と言い続けた話が無性に好きだ。おじさんが何度も「死ね~~~~~死ね~~~~~~」と言うのを想像するだけで口角が上がる。辛いことがあった時は顔も知らないそのおじさんのことを考えて心の平安を保っている。琴奨菊のおしりがぶつぶつでダメだと言われたときも70億おじさんのおかげで耐えられた。見ず知らずの70億おじさんに助けられて僕は生きている。バイト先には70億おじさんとは別に50億おじさんという人も来る。50億おじさんというのは僕が勝手に心の中で呼称しているのだが、彼は見ず知らずの遠縁の親戚の遺産50億円が突然転がり込んできてリアル人生ゲームをクリアしたそうだ。その資産を運用して2億ほど稼いだそうだが、それはサラリーマンの生涯平均賃金と同程度なので、自慢されても困る。店にはよく来るので顔見知りなのだが、接客しているときはどうにか500万円くらいくれないかという考えで頭の中が本当にいっぱいになる。接客は笑顔が命なので、そういう時は70億おじさんのことを考える。50億おじさんを前にして70億おじさんのことを考えるのは面白い。70億おじさんは正しく言うと-70億おじさんなので、その差120億おじさんズなどとわけのわからないことを考えていると大体グラスを割る。グラスを割って怒られているときも、70億おじさんに助けられる。